全人類はYouTuberヒカキンの全動画を楽しめるのか? ~最新光通信技術の話を添えて~

ヒカキンTV~えっびで~~~♪

はじめに

本記事はeeic2019アドベンドカレンダー2019(https://qiita.com/advent-calendar/2019/eeic) 22日目の記事です。

eeic2016のたのむーです。

最近めっきり寒くなりましたね。現代っ子である我々は寒さを我慢して外に遊ぶのではなく、家にこもってストーブの前でYouTubeといった人も多いと思います。

 

本記事では有名YoutuberヒカキンさんのYouTubeチャンネルの

全動画を全人類が高画質で楽しむためにどれだけの情報が伝送されるのかと現行の光通信技術(本当の概略)について触れていければと思います。

(本当に適当に書いたのでガバガバだけで怒らないでね。ブログって書くの大変だね。たのむーにはむいてなかっ太) 

 

 

注:光通信界隈の方へ

本記事はヒカキンさんを話題に挙げながら学科の先輩・同期・後輩諸氏に光通信の現状と課題、それに対しての取り組みについて知ってもらいたいという動機に基づいて書かれたもので、一部意図的に正確とはいいがたい表現を使っている可能性がありますがご容赦ください。

また本記事は最新の現状を反映しきれていない可能性があります。光通信技術についてはコアネットワークを考えます。

取り扱う情報はECOC(European Conference of Optical Communication) 2017 PDP(post-deadline paper)までの内容を中心にOFC(Optical Fiber and Communication conference)2019までの内容を取り扱います。ECOC2019の進捗については予稿集が公開され次第追記する可能性があります。

 

全人類がヒカキンさんの全動画を楽しんだ際の通信量

ヒカキンチャンネル情報

今回はHikakin TV(youtube.com/user/hikakintv)とHikiakin Games(https://www.youtube.com/user/HikakinGames/featured)のチャンネルを基に考えます。

現在(2019/12/22)までにヒカキンさんの2チャンネルの合計動画数は4000本に達しています。[1]

また平均動画時間は約6分(2019/06/25時点でHikiakin TVのみの平均値)[2]です。

 

Youtube条件設定

次にYouTubeで動画再生をする際にやり取りされるデータ通信量について考えます。やはり我々はヒカキンさんを最も高画質で楽しみたいと思います。

なので当然画質はHQ(最も高画質のモード)で視聴する場合を考えます。

HQモードで1時間YouTubeの動画を楽しんだときの通信量は 2GBらしいです。[3]

 

全人類がヒカキンさんの全動画を楽しんだ際の通信量

上記の数値を基にヒカキンさんの全動画をHQモードで視聴した際に予想される通信量を見積もると

(全動画視聴時間)×(1時間あたりのHQモード通信量) 

=(6 min × 4000本 ÷ 60) × 2 GB/hour

= 800GB

に相当します。

 

現在の世界の人口は77億人[4]なので全人類が全ヒカキン動画を楽しんだ際の通信量は

(全人類の人数)×(一人が全動画を見た際の通信量)

= 77億人×800GB

= 6000000000000 GB (= 6.0 ZB(ゼタバイト))

に相当するっぽいです。

やばいですね。消費電力で世界がとろけそうですね。

我々は光通信でもってこの膨大な情報をやりとりせねばなりません。可能なのでしょうか?

 

 

 

 

 

6ZBの通信量って現実的にありうるの?

上の計算では全人類が全ヒカキン動画を楽しむ場合を考えました。結果6 ZB(ゼタバイト)という通信量になりました。

当然全人類がヒカキン動画を”同時に"楽しむことはないと思います。例えば1年とかそんなスパンでしょう。

 

では上の非現実的な仮定のもとではなくて実世界ではどれだけの通信量がやりとりされているのでしょうか?

 

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Fig1. 月間トラフィック予測

これは世界最大のネットワーク機器会社Ciscoが打ち出した統計予測[5]です。

2019年現在,月あたりの通信量は201 EB(エクサバイト),1年あたりに直すと1.2 Eバイトです。
 2022年では1年あたり4.8 ZBに達する見込みです。

これみると2025年あたりには「全人類全ヒカキン動画通信量」くらいの情報のやりとりは実際に起きてしまいそうですね。

 

このような膨大な量の通信はどのような技術によって支えられているのでしょうか?

 

光通信していく(コアネットワーク)

 実際にヒカキン動画を見る端末はスマホやPCといった(近年の多くの場合)無線で接続された端末だと思います。ただ実際のコアネットワーク(注)では光ファイバーを用いた伝送システムが利用されています。

 

最も単純な光通信システムは01の信号を光の強度に当てはめて送るIM-DD(Intensity Modulation Direct Detection)です。

光の強度を"ある"と"ない"にするだけなので単純ですね。実際1970年代の最初期から現在にいたるまで使用されています。

ただ人類はもっとデータ送りたいよーという気持ちでいっぱいになりました。結果、多値化や多重化の技術、さらにディジタルコヒーレント通信研究されていくことになりました。

 ディジタルコヒーレント通信

コヒーレント通信では光の強度情報だけでなく位相情報も用いることで伝送容量をぐっと引き上げます。

正直コヒーレント通信なんかはeeicの無線通信応用工学とかでも解説されているので別にいいですかね?

ディジタルコヒーレント通信技術は電気系名誉教授の菊池和郎先生の著名な業績です。恐れ多くて僕なんかが語れません(面倒くさいわけではない)。

詳しくはこれ(https://annex.jsap.or.jp/photonics/kogaku/public/38-05-kaisetsu3.pdf)かこれ(https://www.osapublishing.org/jlt/abstract.cfm?uri=jlt-34-1-157&origin=search)とか読んでください・・・

 

多値化

多値化とは、強度をあるなしで変調するだけでなく"なし""少な目""多め""フル"で変調するような仕組みです。

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Fig2. 単純な01と多値化した強度変調[7]

Fig2に強度多値化変調の概略図をしましています。4段階に強度を変調することで2bitの情報を一気に伝送できるので、普通の01強度変調の2倍の情報が送信できます。やったね!

ただこんなことやると信号のSNが劣化するので符号誤り率(BER:Bit-Error Ratio)は一般に悪化します。しかし現在は光増幅器(EDFA:Erbium doped fiber amplifier)が素晴らしく発展しているのでなんとかなったりならなかったりします(疲れてきたので少し適当です)

 

多重化

多値化だけでなく多重化の研究も盛んにおこなわれています。時分割多重や波長多重(WDM:wavelength division multiplexing)が有名ですかね?

例えば波長多重技術では通信波長を標準の1550nmの近赤外光だけでなく、近傍(1530~1565nmとか)に拡張していっぱい信号送っちゃおう!という技術です。

送信波長をN倍にすれば通信量もN倍やん!という感じです。

 

当然無限に多重化できなくて、変調によって各波長がどれだけの帯域を必要とするのか、通信用レーザーがどれだけ狭帯域の線幅で発振できるかとかで変わってきます。

 

現行の光通信

このように様々な通信方式でもって世の中の人間がヒカキンの動画をみることができています。

例えば少し前に策定され400Gbit/s ethernetでは例えば「80km以上の伝送では50Gbit/sの速度で信号を変調する。信号はPAM4で4波長の多重化を行う」みたいな感じで距離などの状況ごとに決定されています。

我々はこのような技術の恩恵にあずかってヒカキンの動画がみれるわけですね。

 

しかし、現行のシステムのままどんどん通信容量を増やして、全人類全ヒカキン動画お楽しみ計画を実行するのはなかなか難しいのが現状です。

 

例えば単一モード光ファイバーでは非線形光学効果などから物理的な伝送容量の限界があること。(100Tbit/sくらい)

現行の50Gbit/s以上の100Gbit/sやもっと高速で変調する変調器がつくれないとかです。

(研究レベルでは存在しています。)

 

 そのような事情の中で近年研究されているものに空間モード分割多重通信(SDM)とよばれるものがあります。

 注

携帯電話基地局と通信を行い、基地局基地局同士を制御装置で結び、さらに制御装置同士を結ぶ交換機、「交換機同士を結ぶ回線」があるが、この交換機同士を結ぶ部分がコアネットワークに当たります。[6]

 

 次世代:空間モード分割多重通信

 空間モード分割多重通信技術は簡単に言ってしまえば「光ファイバーを新しいものにして、多重化の項目を増やそう!」というものです。

光ファイバーはコアと呼ばれる部分に光が全反射で閉じ込められながら伝搬していく構造です。[8]

 

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hikarifaiba-

 このときファイバーの断面方向には光は定在波として存在します。

現在の光ファイバーはシングルモードファイバーと呼ばれるもので定在波が一個しかありません。

空間モード分割多重通信は「ファイバーのコアの数を増やしてさらにコア部をでかくすれば定在波の数が2倍3倍になるから、それぞれに変調加えれば伝送容量も2倍3倍じゃん!!」という発想のものです。

 コアの数を増やしたものをマルチコアファイバー、コアを太くしたものをマルチモードファイバー、両方やったものをマルチコアマルチモードファイバーと呼びます。まんまですね。

 空間モード分割多重通信技術は日本のKDDIやNTTで盛んに研究されていて2017年にKDDIの相馬さんの手によって、現在の通信容量の世界記録である10.16 Pbit/sが達成されました。[9]

この世界記録はこれまでの通信技術てんこもりみたいな感じで達成されています。

使用されたファイバー「6-モード19コア(=114空間モード)のマルチコアマルチモードファイバー」で各チャネルは

  • 739波長多重
  • 12 Gbit/sの変調速度
  • 偏波多重64直交振幅変調(DP-64QAM), 部分的に16QAM
  • SD-前方誤り訂正符号(冗長度12.75%、20%、25.5%)

の変調によって世界記録が達成されました。

 

もちろんこの記録は実験室レベルでの実証に成功したのみで、そのまま我々の利用するコアネットワークが400Gbit/sから10万倍程度の10.16 Pbit/sになるわけではありません。

しかしながら空間モード多重によって我々の通信容量が飛躍的に伸びうることは事実として存在すると思います。

 

結局、全人類は全ヒカキン動画みれそうなの?

 先ほど伝送容量世界記録を初回しました。10.16 Pbit/sで6ZBの情報を扱う場合

(1byte = 8bitとして)

(全人類全ヒカキン動画通信量)÷(通信容量世界記録)

= (6 ZB×8)÷(10 Pbit.s)

= 4800000 秒

= 13時間

なのでコアネットワークで情報のやり取りをするだけで13時間かかることになります。

 

うーーーん正直この記事を書きながら計算してたので僕も書きながらこの所要時間をしったのですが、思ったより時間かかるなといった印象です。

ただこの時間は一個の送信機で全ヒカキン動画を変調するのにかかる時間なので、実際にはもっと少ない時間で変調は終わると思います。

 しかし、各端末には結局コアネットの速度ではなく無線の側で届けられることや各端末や基地局での遅延等があることを考えるとなんとも言い難いですね。

 

終わりに

 今回「全人類はYouTuberヒカキンの全動画を楽しめるのか? ~最新光通信技術の話を添えて~」とかいうタイトルにしましたがヒカキン動画の検討についても光通信技術の紹介についてもすごいふんわりと中途半端になってしまいました。

結論がちゃんとでないくそみたいなまとめ記事っぽくなっちゃいました。まじ反省。

 

おとなしくマリカーの記事書いとけばよかったです。

 

思いついたときは「めっちゃキャッチーやん」とか思ってましたが普通に検討の時間が足りませんでした。反省です。

ヒカキン動画を一度も見たことない点も反省ポイントですね。

 

ただ途中で述べたように光通信技術は日進月歩の進歩をしており、我々が「ネット最高!Big dataをクラウドでやり取りするぜ!!合間にはYouTube! Netflix! Amzon prime video! Abema TV! etc見まくるぜー!!」とかやってもなんとかなっているのは光通信技術の高速な進歩のおかげなのは間違いないです。光通信技術者にまじ感謝。

 

eeicの皆さんにつきましては物理層でうおおおおおって光通信技術を支えている人達がいることをたまに思い出して、「あー今月通信量制限来ちゃったよ。だけど〇TT(〇DDI)は頑張ってくれてるもんな。仕方ないね」みたいな気持ちになってください(?)

 

明日は我が同期による「オタクくんさあ、反出生主義とか言ってないで彼女作ってセックスしな?笑」(リンクは明日以降)です。きっと僕の記事の100倍面白いことでしょう

 

それでは皆さんよいお年を。来年こそはさいきょーになろうな。

 

 (追記)

YouTubeの表記ミスを訂正しました。(12/22)

 

参考

[1]https://ytranking.net/?mode=view&p=1#rank5

[2]https://note.com/shizuka_m/n/nee245bc4cfba

[3]https://mobile.line.me/guide/article/29986020.html

[4]https://www.unic.or.jp/news_press/features_backgrounders/33798/

[5]https://www.cisco.com/c/ja_jp/solutions/collateral/service-provider/visual-networking-index-vni/white-paper-c11-741490.html#_Toc536227862

[6]https://www.kddi.com/yogo/%E9%80%9A%E4%BF%A1%E3%82%B5%E3%83%BC%E3%83%93%E3%82%B9/%E3%82%B3%E3%82%A2%E3%83%8D%E3%83%83%E3%83%88%E3%83%AF%E3%83%BC%E3%82%AF.html

[7]http://datacenters.seesaa.net/article/464198387.html

[8]https://klp.co.jp/business/opticalfiber.html

[9] D. Soma et al., ECOC2017 Th.PDP.A.l, 2017.